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ベーシスト・町田類が語る、本場のジャズと若き才能たちに囲まれた10日間
2024年参加者 / ベース 町田類
- 2025/09/18
- 2025/09/27
Seiko Summer Jazz Camp 2024の最優秀賞を受賞した町田類さんは、関西を拠点に演奏活動を行なっているジャズ・ベーシスト。
最優秀賞受賞時は「アメリカに留学したくなった」と語っていた町田さん。
2025年6月に最優秀賞の副賞でもあるアメリカでのジャズキャンプ「Jazz Institute at Brevard Music Center」に参加し、その体験記を寄稿してくれました。
文:町田類
撮影:町田類(本編)、樋口勇一郎(プロフィール)
ジャズの本場アメリカへ
この6月、アメリカ・ノースカロライナ州で開催された Brevard Jazz Camp に参加してきました。講師には、Seiko Summer Jazz Camp(以下SeikoSJC) の講師リーダーでもある マイケル・ディーズさんをはじめ、ミシガン州立大学のロドニー・ウィテカーさん(SeikoSJC2022、2023講師)やランディ・ナポレオンさん、そして全米各地で活躍する素晴らしい先生方が揃っていました。さらに、京都出身で現在ニューヨークを拠点に活動されているピアニストの早間美紀さんも講師として参加され、キャンプ中は大変お世話になりました。

全米から集う若き才能たちとの出会い
参加者は SeikoSJC の約3倍にあたる 約120名。多くがアメリカ国内の音楽系大学や高校のビッグバンドに所属している学生たちでした。みんな非常にしっかりしていて大人びていましたが、実際は自分より年下の学生がほとんどで、中にはなんと13歳の参加者もいて驚きました。
このキャンプは今年で第10回を迎え、何度でも参加できるようです。寮に到着した初日には「今回で何回目の参加?」と聞かれました。2〜3回目のリピーターが多く、以前このキャンプに参加された平田晃一さん(SeikoSJC2023最優秀賞受賞)、平倉初音さん(SeikoSJC2022最優秀賞受賞)、治田七海さん(SeikoSJC2019最優秀賞受賞)の名前も話題に出てきました。

巨匠とのレッスンと、刺激に満ちたスモールコンボ
キャンプは約10日間にわたって行われ、前半は8〜9名ほどのスモールコンボを中心に構成されていました。各楽器別のクラスやマスタークラス、プライベートレッスンなども充実しており、後半は4つのグループに分かれてビッグバンドの演奏が行われました。
僕にとって特に印象的だったのは、初日の最初のレッスンがロドニー・ウィテカーさんのプライベートレッスンだったことです。ロドニーさんはとても温厚で優しい方で、僕の英語力が不十分であることを察し、ゆっくり丁寧に話しかけてくださいました。
その後のスモールアンサンブルもロドニーさんのクラスで、メンバーの多くは TA(ティーチング・アシスタント)を務める大学生たちでした。みんな非常にレベルが高く、レッスン後もスタジオに残って一緒にセッションをするなど、毎日がとても楽しく、充実していました。
夜には、毎晩各講師による全体向けのマスタークラスが行われ、さまざまな先生のお話を聞くことができました。その中で講師陣による演奏も披露され、リズムセクションの生徒はその都度選ばれて演奏に参加する機会もありました。僕も何度か先生方と共演する機会をいただき、非常に貴重な経験となりました。

大興奮!スペシャルゲスト「Yellowjackets」との時間
特に印象に残ったのは、スペシャルゲストとして来てくださった Yellowjackets のマスタークラスです。1981年に結成されたこのフュージョンバンドは、メンバーを変えながらもサウンドを継承し続けており、バンドとして音楽を高め合っていく姿勢に強く感銘を受けました。初めて生で聴いたフュージョンの演奏は本当にかっこよく、その日から一気にファンになりました。
そしてなんと、TAたちによる Yellowjackets への演奏披露の場があり、僕もその演奏に加わらせていただきました!
毎晩行われたジャムセッションと、仲間との絆
また、毎晩行われるジャムセッション(3会場で同時開催)にも積極的に参加し、他の学生たちとの交流を深めることができました。セッション後には、みんなで近くのファストフード店「Cook Out」に行き、ハンバーガーを食べながら語り合うのが定番コースになりました。これも素敵な思い出のひとつです。
キャンプが始まって5日ほど経つと、スモールコンボの発表が終わり、次はビッグバンドのクラスが始まります。SeikoSJCは5日間だったため、コンボの演奏を終えた時点で一区切りという感じでしたが、Brevard ではまだ続きがあるというのが嬉しかったです。
ビッグバンドクラスでは4つのバンドに分かれ、僕はサックス奏者のシャレル・キャシティさんが指揮するバンドに配属されました。リズムセクションは各パートに3〜4人ずついて、交代で初見演奏に取り組みました。どの曲も難易度が高く、特にホーンセクションは大変そうでしたが、みんな軽々と吹きこなしていて圧倒されました。
最終日には、各ビッグバンドによるコンサートが行われました。どのバンドも担当の先生の個性が色濃く出ており、それぞれのカラーを楽しむことができました。演奏後は、まるで打ち上げのように盛り上がり、再びみんなで Cook Out に行って、深夜まで語り合いました。

音楽が言葉の壁を越えた瞬間
翌日はフライトまで時間があったため、キャンプで知り合った友人に Brevard の街を案内してもらい、最後までたっぷり楽しむことができました。
このキャンプを通じて改めて感じたのは、SeikoSJCのときと変わらない思いでした。英語への不安や、「アメリカ=ジャズの本場」という緊張感はありましたが、一緒にセッションをして音を出していくうちに、自然と距離が縮まり、気づけば皆がかけがえのない仲間になっていました。
このつながりは、きっとこれからもずっと続いていくと信じています。
ぜひこのキャンプに参加してみてください!
僕も、もう一度参加したいと思っています。このキャンプは29歳までなら何度でも参加可能なので、興味がある方はぜひ応募してみてください!
