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Seiko Summer Jazz Camp All Stars 2025 in Sapporo

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Seiko Summer Jazz Camp All Stars 2025 in Sapporo

2025年8月3日 @札幌芸術の森 アートホール アリーナ

  • 2025/09/08
  • 2025/09/10

2007年にスタートして以来、多くの実績を残している都市型ジャズ・フェスティバル『サッポロ・シティ・ジャズ』とSeiko Summer Jazz Camp(以下、SeikoSJC)とのスペシャルなライブが実現したのは2023年。以来、SeikoSJCの講師であり、ジャズ・シーンの第一線で活躍するミュージシャンが集結したAll Starsによるステージは恒例となり、今年も8月3日に<札幌芸術の森 アートホール アリーナ>で『Seiko Summer Jazz Camp All Stars 2025 in Sapporo』が開催されました。『Seiko Summer Jazz Camp All Stars』と題した全国4都市5会場で繰り広げるツアーの初日でもあったこの日の模様をご紹介します。

札幌ジュニアジャズスクールによるオープニングアクト

オープニングアクトを務めたのは、札幌芸術の森を拠点に活動している札幌ジュニアジャズスクールの2バンドです。前日に行われた『セイコーわくわく音楽教室2025 ~Jazz編~ in 札幌』でSeikoSJCの講師から学んだことを発揮する最初のライブでもあり、2階席を見れば、その講師たちが温かい眼差しで舞台を見つめていました。
まずは、札幌ジュニアジャズスクールの小学生クラス<SJF Junior Jazz Orchestra>が登場し、「Alright,Okay,You Win」を元気いっぱいに明るく演奏。『セイコーわくわく音楽教室2025 ~Jazz編~ in 札幌』で、講師から具体的なアドバイスを受けたナンバーだけあって、前日よりも結束力のあるパワフルなプレーで観客を魅了。オープニング曲から手拍子が沸き起こった勢いそのままに続く2曲目は多くの人が1度は耳にしたことのあるスタンダード曲『TEQUILA』をノリノリでパフォーマンス。強弱の効いた演奏の随所で“テキーラ!”の掛け声も入り、その可愛らしいヴォイスにオーディエンスの顔は緩みっぱなしです。

続いては、中学生クラス<Club SJF>による演奏にチェンジ。1曲目の「Blues For Butter」は大きなウネリを感じ、ダイナミックな演奏が気分を上昇させます。一体感のある演奏や豪快なトランペット・ソロは、彼らが中学生であることを忘れてしまうほど。2曲目はブラウニーの愛称で知られ、1956年に不慮の事故でこの世を去った大人気ジャズ・トランペッター、クリフォード・ブラウンが作曲した「Sandu」でした。力強いリズム、くっきりと描き出すハーモニーなど、息の合ったプレーから目が離せません。堂々たる即興演奏に目が釘付けとなったトランペット・ソロやブイブイと鳴らす圧巻のサックス・ソロにも大感動。3曲目の「Brothers & Sisters」もソロはもちろん、ホーン隊がユニゾンでプレーした場面もご機嫌で、観客は盛大な拍手を送っていました。

Seiko Summer Jazz Camp All Starsが繰り広げた白熱のライブ演奏

いよいよ『Seiko Summer Jazz Camp All Stars』のライブがスタートです!メンバーはSeikoSJCの講師リーダー&トロンボーン奏者のマイケル・ディーズ、ディエゴ・リベラ(Ts)、ダン・ニマー(P)、ジョセリン・グールド(G,Vo)、クインシー・デイヴィス(Dr)、そして、昨年、SeikoSJC2024で最優秀賞を受賞した現在、大学在学中のベーシスト、町田類さんです。

ステージにメンバーが揃い、マイケルが客席に向かって「こんにちは」とカジュアルに日本語で挨拶&メンバー紹介をした後、いきなり、重厚感あふれるドラムの音がホールに鳴り響き、その場の空気が一転しました。All Starsのライブはクインシーのオリジナル曲「What?」で始まったのです。演奏開始直後からホットなプレーがさく裂し、オーディエンスは前のめりで聞いています。ディエゴが作曲したラテン調の軽快なナンバー「Bracero」の次はマイケル・ディーズが書いたファンキーな匂いも漂うミディアム・テンポの楽曲「Word to the Wise」を披露。今年、初めてSeikoSJCの講師を務めるジョセリンをフィーチャーしたスタンダード曲「Easy Living 」は、リズム・セクションとのカルテットによるバラードで、それまでの景色をガラリと変え、ジョセリンのギターと歌声がダイレクトに染みるムーディーな時間となりました。

休憩を挟んで、第2部はジョセリンと同じく、今年からSeikoSJCの講師となった人気ジャズ・ピアニスト、ダン・ニマーによる「Untitled #5」で口火が切られ、ハード・バップな世界に突入です。4ビートに乗ったそれぞれのソロがやたらとカッコ良く、聞き手のカラダは自然とゆれゆれ。スピード感あふれるオスカー・ピーターソン(P)作曲の「Cakewalk」で歓声が上がるほどの盛り上がりを見せ、オスカー・ペティーフォード(B)が作った彼の代表曲「Tricotism」では、フィーチャー・ミュージシャンの町田さんとジョセリンのふたりがリズミカルに演奏を観客に届けました。ダンが作曲した「Lu’s Bounce」はピアノ・トリオによるアグレッシブな演奏。鍵盤から流れ出る小気味よい音の連なり、メンバーをあおるドラム、カラダ全体でプレーするベーシストのパフォーマンスに観客は大興奮!

ここでサプライズ・ゲストがマイケルから紹介されました。SeikoSJC 2023の優秀賞を受賞している山口将大さんで、彼は、昨年行われた『SAPPORO CITY JAZZ 2024 North JAM“Picnic”Session』の大トリを務めたAll Starsのステージにも飛び入り参加した地元出身のジャズ・トランぺッターです。現在、バークリー音楽大学に通いながら、スキル・アップ中の彼は夏休みを利用して帰省していたそうで、この秋からは同大学の4年生として再び学びの時間に明け暮れるとか。 そんな彼を交えて演奏したのはオープニングアクトの<Club SJF>が2曲目に披露した「Sandu」でした。これには、会場で鑑賞していた札幌ジュニアジャズスクールのメンバーも歓喜の声を上げていました。グルーブ溢れる演奏にオーディエンスの手拍子も熱を帯びます。山口さんのアグレッシブなソロを皮切りに、豪快な音色が心に突き刺さるディエゴのサックス、一音一音をクッキリと響かせ、キレ味のあるトロンボーン・プレーで魅了するマイケル、温もりを感じさせながら独創的なフレーズでギターを弾いたジョセリン、粒立ちの良い音玉が耳を幸せにするダンのピアノ、ウッドベースの弦から骨太な音を響かせた町田さん、彼らを支えながらしっかりとリズムを刻むマイケル。その素晴らしい演奏に観客は盛大な拍手と声援を送り、スタンディングオベーションとなったアンコール曲「Scrapple from the Apple」で幕を閉じたのです。

Seiko Summer Jazz Camp All Starsのメンバーは大成功のステージを終え、その後に続く東京、横浜、大阪でのライブも圧巻の演奏で大勢の観客を魅了しました。

出演者の感想

●中学1年生の加藤千結さん(Tb)
楽しくオープニングアクトを務めることができました。Seiko Summer Jazz Camp All Starsの演奏は安定感が素晴らしくて感動しましたし、何より、演奏する瞬間、瞬間を楽しんでいる講師ミュージシャンの姿に感銘を受けました。

●中学2年生の高橋秀羽さん(P)
昨日の『セイコーわくわく音楽教室』の後、今日は笑顔で演奏しようと心に決めていましたが、それを実現できてよかったです。講師の方々の演奏は、やはり“格が違うなあ”と圧倒されっぱなし。アドリブもその度毎に違うフレーズでしたし、本当に凄いと聞き入ってしまいました。

マイケル・ディーズ

美しい街、札幌でSeiko Summer Jazz Camp All Starsのツアーの幕開けを飾ることができて、とてもうれしく思っています。メンバー全員、オープニング・アクトで披露してくれた札幌ジュニアジャズスクールのハイレベルな演奏に刺激を受け、温かいお客さまの前で満足のいく演奏をすることができたと思っています。SeikoSJCの卒業生、山口将大くんがサプライズで1曲、飛び入り参加してくれたこともうれしかったです。トランペットの彼が参加してくれるならと予定していた曲を変更して、札幌ジュニアジャズスクールが演奏した「Sandu」を演奏しましたが、これは、優秀な生徒さんたちへのトリビュートも意味しています。
札幌ジュニアジャズスクールの生徒の中には、将来のジャズ・スターを予感させるソリストも何人か見受けられましたよ。例えば、ソロを吹いた女子のテナー・サックス奏者は、現在、大活躍中のジャズ・ミュージシャン、寺久保エレナさんや治田七海(SeikoSJC2019最優秀賞受賞者)さんのようにいずれ、世界に羽ばたく逸材だと思います。
札幌は“ジャズの未来を担う優秀なミュージシャンの育成の場”として、今後も重要なスポットであり続けると確信しています。また、すぐにでもこの街に戻って演奏できることを心から願っています。

町田類

昨年、Seiko Summer Jazz Camp All Starsのツアーで1曲だけ、シットインさせてもらったのですが、今年は自分がAll Starsのメンバーに加わり、大勢のお客さまの前で演奏をさせていただくことができました。正直な話、ライブが終わった今も信じられない気持ちでいっぱいです(笑)。ステージ上の講師ミュージシャンはプレー中、常にアイコンタクトを送ってくれて、優しくリードしてくれました。この貴重な経験は、僕の音楽人生において必ずや糧になると思います。
札幌ジュニアジャズスクールの生徒さんたちは前日の『わくわく音楽教室』の時よりもニコニコとした表情を見せ、踊るように活き活きと演奏していたので驚きました。たった1日でパワー・アップした姿を見ることができてとてもうれしかったです。講師陣も演奏中に「イエ~イ」と声援を送っていましたが、ベテランのジャズ・ミュージシャンを札幌ジュニアジャズスクールの皆さんはエキサイトさせたのですから、これはすごいことです。

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