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Interview
町田類クインテットのメンバーが明かす、ジャズキャンプでの学びと将来の展望
ベース 町田類、サックス 鈴木真明地、トランペット 坂井奈々香、ピアノ 川人唯、ドラムス 後藤龍太郎
- 2025/03/10
- 2025/03/17
Profile
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町田類(まちだ るい)
町田類(まちだ るい)
2003年生まれ。兵庫県西宮市出身。小学1年生からピアノを、中学1年生からウクレレを始める。関西外国語大学入学後、JAZZ研に入部しコントラバスを始める。2023年、第41回浅草JAZZコンテストに出場し、審査委員特別賞受賞。2024年、Seiko Summer Jazz Camp 2024に参加し、最優秀賞受賞。現在は大学に通いながら活動している。
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鈴木真明地(すずき まあち)
鈴木真明地(すずき まあち)
2003年名古屋市生まれ。6歳からサクソフォンとタップダンスを始め、クラシックサクソフォンを三日月孝、堀江裕介、坂東邦宣に、ジャズサクソフォンをPatrick Bartleyと池田篤に学ぶ。9年間リトルヒルズジャズオーケストラに所属し、Japan Student Jazz Festivalで優勝、2018年国際ジャズオーケストラ・フェスティバルでは個人賞と最優秀個人賞を受賞。15歳よりライブハウスで活動を開始し、2019年高校生ソロプレイヤーズコンテストでグランプリを獲得。上京後、2023年8月にSeiko Summer Jazz CampでSpirit of Jazz Awardを受賞。国立音楽大学NEWTIDE JAZZ ORCHESTRAのLead Alto、Concert Masterとして活動し、第54回ヤマノビックバンドジャズコンテストで入賞。現在、国立音楽大学ジャズ専修3年。
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坂井奈々香(さかい ななか)
坂井奈々香(さかい ななか)
湘南出身。6歳よりマーチングバンドに所属し、関東・全国大会を経験する。7歳よりコルネットを始め8歳から社会人吹奏楽団に所属し地元湘南にてコンサート活動を開始。14歳でジャズと出会いジャズ奏法を独学で習得する。15歳でジャズ理論を山口真文氏に師事、16歳で尚美ミュージックカレッジ「高校生ソロプレイヤーズコンテスト2020」にて準グランプリを獲得、17歳でフルスカラシップを得て米国音大に短期留学を果たす。Seiko Summer Jazz Camp 2024にてヤマハ賞を受賞。現在、洗足学園音楽大学Jazz and American Musicコース在籍中。原朋直氏、ルイス・バジェ氏に師事。
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川人唯(かわひと ゆい)
川人唯(かわひと ゆい)
1999年東京都新宿区生まれ。2018年洗足学園音楽大学ジャズコースに入学、2022年3月に同大学を卒業。2024年8月、Seiko Summer Jazz Campに参加して、オリジナル曲で作編曲賞を受賞。現在は高校での音楽教員の傍ら、アーティストのサポート演奏や、ソロピアノでのBGM音源の提供、オリジナル曲の制作、自身のリーダーバンドや、ビッグバンドでのライブ活動や都内で定期的にセッションホストを務めるなど精力的に活動している。
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後藤龍太郎(ごとう りゅうたろう)
後藤龍太郎(ごとう りゅうたろう)
2004年東京都生まれ。中学2年生からドラムを始め、高校入学時にビッグバンドでジャズドラムを始める。Scott Latham、神保彰、高橋信之介、高橋徹に師事し、Thomas TaylorやDwayne Broadnaxからも影響を受ける。高校3年間、"Teikyo Jazz Orchestra Swinging Honey Bees"に所属し、日本スチューデントジャズコンテストで会長賞や優秀プレイヤー賞を受賞。また第29回ハママツ・ジャズ・ウィークではベストプレイヤー賞を獲得。2024年のSeiko Summer Jazz CampではQuincy Davis氏に指導を受け、優秀賞である"Most Improved Student Award"を受賞。帝京高等学校インターナショナルコースを経て、現在国立音楽大学ジャズ専修2年に在学中で、東京近郊で活動している。
2025年1月26日にSeiko Summer Jazz Camp Graduates Live in Tokyo vol.38が東京・高田馬場にある<Café Cotton Club>のSPECIAL ANNEX<SOUNDS lounge>で開催されました。ステージを飾ったのはSeiko Summer Jazz Camp 2024で見事、最優秀賞を受賞した町田類(B)さん率いるクインテット。メンバーはなんと全員、Seiko Summer Jazz Camp(以降SeikoSJC)の受賞者でした。トランペットの坂井奈々香さんはヤマハ賞、ピアノの川人唯さんは作・編曲賞、ドラムの後藤龍太郎さんは優秀賞、そして2023年度でSpirits of Jazz賞を受賞したアルト・サックスの鈴木真明地さんという強力陣によるエネルギッシュなプレーは2セット披露され、3セット目は楽器を持参していたオーディエンスも交えた恒例のジャムセッションタイム!大盛り上がりで幕を閉じた直後に、町田類クインテットのメンバー全員にお話をうかがいました。
取材・文:菅野聖
撮影:樋口勇一郎
取材日:2025年1月26日
緊張感漂うリハーサル後の初共演ライブ
町田類(B):僕がリーダーを務めるバンドでSeiko Summer Jazz Camp Graduates Live in Tokyoに出演することが決まり、この機会を生かして新たな交流を広げたいと思いました。そこでSeiko Summer Jazz Camp 2024の参加者の中から受講期間中、ほぼ会話をしていない人たちに声をかけたんです。前年度に参加していた(鈴木)真明地くんは、サックス奏者、パトリック・バートリーの動画で演奏しているところを見て興味がわき、メッセージを送りました。
鈴木真明地(As):2024年度の最優秀賞を獲得した人が全く知らないベーシストだったので、町田類ってナニモノ?と思っていました(笑)。いつか会って話をしてみたかったので、彼から突然、連絡をもらい、絶好のチャンスだと快諾したんです。
坂井奈々香(Tp):私はこれまでSeiko Summer Jazz Camp Graduates Liveにお客さんとして何度も参加していたので、ついにミュージシャンとしてステージに立つんだとワクワクしましたね。
川人唯(P):突然だったので“えっ!”って驚きましたが、かなりうれしかったです!
後藤龍太郎(Dr):最優秀賞の受賞者から直々にお声がけいただき、うれしくて即「やります!」と返事をしました。


町田:ホレス・シルヴァー(P)やロイ・ハーグローヴ(Tp)の2管編成の楽曲などからセットリストを組み、SeikoSJCの講師ミュージシャンでもある中村恭士(B)さんが作曲した「Yasugaloo」も織り交ぜました。というのも、去年の11月に大阪の心斎橋にあるライブ・ジャズ&バー<プルースト>でSeiko Summer Jazz Camp 2024の関西在住参加者とグループを組んで演奏したら、すごく楽しかったんですよ。それで、今回は関東在住参加者と挑戦したくなりました。川人さんが作曲した「Ferris Wheel at Night」はSeiko Summer Jazz Camp 2024のアンサンブル授業で聴いた時から素晴らしい曲だと思っていて。
川人:自分が書いた曲を他のミュージシャンに演奏したいと言われることは本当にうれしいことです。ありがとうございます!
町田:リハーサルは本番当日の数時間ということもあり、誰もが黙々と演奏していたよね(笑)
後藤:みんなの演奏がすごいから、俺、大丈夫かなと心配だったし、かなり緊張もしていたんです。
坂井:私もリハの時、どうしようって(笑)。
川人:全員が様子をうかがっているリハだったかも。でも、こうして本番のライブを終えた今、もう1回、演奏したら全然、違ったノリになる気がします。
鈴木:本番のライブはすごく楽しかった。演奏中、リーダーの町田くんと何度も目が合い、その顔がやっぱり楽しそうで。でも、リハで言っていたことと本番では全く違うことになったところも……。
全員:そうそう(笑)。
鈴木:その辺はみんなで支え合って。
坂井:危なかったですけれど(笑)。


Seiko Summer Jazz Campから得られたこと
川人:Jazz Campに参加したことで、当時悩んでいた迷いが消え、やりたいことが明確になりました。参加した仲間の話を聞いたり、講師の方々、例えば大林武司(P)先生から色々うかがい、新しい目標もできました。
坂井:講師の演奏や参加者のアンサンブルを聞いて“絵を描くように音楽を演奏すること”の大切さを実感しました。
後藤:クインシー・デイヴィス(Dr)先生の演奏を間近で見て“アメリカの音だ”と感激しましたね。僕はこんな風に昂揚するドラムを叩きたい、自分が信じるワクワクする音が出せるように頑張ろうと思えたことは収穫でした。ちなみに、SeikoSJCの応募資格年齢は16歳から25歳で、僕はJazz Camp中に20歳を迎えました。参加者の中では年下に属しましたが、年齢関係なく仲間には入れたのは、みんなが同じ方向を見ていたからだと思います。ですから、10代の人たちも躊躇せずに応募されてみてはいかがでしょうか。
鈴木:作曲の授業で僕が書いた「Financier」を取り上げてくださり、多くの方からお褒めの言葉をいただきました。しかも、講師ミュージシャンによるビルボードライブツアーでこの曲を演奏してくれて、さらにマイケル・ディーズ(Tb)先生がレコーディングもしてくださいました。そのおかげで作曲面の自信が持てるようになったし、本当に参加してよかったです。そんな思い出の多いSeikoSJCでは同じ熱量を持った仲間と出会えて、今もつながりがあります。
坂井:自分から誰かに話しかけることが得意じゃない私でもSeikoSJCでは充実した時間を過ごせましたので、コミュニケーションを取るのが苦手で応募を迷っている人に私からお伝えしたいことは、音楽を愛する心と参加者&ミュージシャンに対するリスペクト、そして向上心があれば大丈夫だってことです。
町田:スター・ミュージシャンの握手会に参加するような気分で応募してもいいんじゃないかなって僕は思っています。だって、5日間も素晴らしい先生方とご一緒できるチャンスはなかなか、ありませんからね。
川人:私の場合は、大学を卒業して3年も経ったタイミングでの応募でしたが、この年齢で参加したからこその受け止め方ができたように思います。社会人でもジャズが好きでやってみたいと思っているなら、ぜひ、応募してみてください。参加すれば、必ず良い経験になると100%言い切れますから。

