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Seiko Summer Jazz Camp 2024【後編】

Report

Seiko Summer Jazz Camp 2024【後編】

講師陣と受講生の鼓動がスウィングした4日間

  • 2024/09/18
  • 2024/09/18

8月12日から5日間に渡って開催されるはずだったSeiko Summer Jazz Camp 2024は最終日の16日に台風7号が関東に大接近したため、急きょ、予定を変更し、4日間に凝縮することになりました。誰もが想像していなかった展開ではありましたが、結果は大成功!無事、ガラコンサートや授賞式も開催することが出来たのです。ハプニングを乗り越えたことで、さらに一体感が生まれたSeiko Summer Jazz Camp 2024。後編は8月15日、最終日の模様をレポートいたします。

取材・文:菅野聖
撮影:amigraphy
取材日:2024年8月12日・14日

前編はこちら

講師の言葉を全身でキャッチする受講生たち

この日は、尚美バリオホールに受講生全員が集まり<作・編曲クラス>からスタートしました。ステージには一流ジャズ・ミュージシャンの講師たちが並び、受講生が書いた楽曲及び編曲した作品を演奏していきます。大スクリーンには楽譜が映し出され、講師の守屋純子(P)がわかりやすい言葉でアドバイス。他の講師たちも曲をブラッシュ・アップするためのヒントや、初見で演奏するプレーヤーでも見やすい楽譜の書き方などを伝授していました。1時間半の授業は台風の影響で1時間に短縮されましたが、非常に濃厚な授業内容だったと見受けられます。これで全ての授業が修了です。各グループの講師から受講生ひとりひとりに修了証が手渡され、誰もがみな笑顔、笑顔!

作・編曲クラスの様子
撮影:amigraphy
修了証を受領する受講生
撮影:amigraphy

グループ結成4日目とは思えないほど息の合った演奏に会場は大盛り上がり

本来ならば一般から応募のあったお客さまも鑑賞する中で行なわれるはずだったガラコンサートでしたが、開催日が1日繰り上がったことで無観客スタイルになりました。それでも共に学んだ仲間たち、そして、指導してくれた講師の前で自身の成長を披露するスペシャル・タイムはSeiko Summer Jazz Campのクライマックスといえます。

講師陣から絶大な信頼を得ている音楽プロデューサーかつSeiko Summer Jazz Camp事務局の佐々智樹氏がガラコンサートの開幕を伝え、トランペット、サックス、トロンボーン、ギター、ピアノ、ベース、ドラム、ヴォーカルの8人編成による各グループが順に演奏。司会は例年通り、テレビやラジオで大活躍中の八雲ふみねさんです。彼女からグループ名、出演メンバー、そして曲紹介があり、プレー後には担当講師から受講生たちに労いのメッセージが送られるという流れで進みました。出演&曲目、講師のメッセージは以下の通りです。

グループ1<Text Messengers>

多くのミュージシャンからリスペクトされているジャズ・ヴォーカリストのベティ・カーターが作詞・作曲した「Tight」とデューク・エリントンの右腕といわれたビリー・ストレーホーン作曲の「Lotus Blossom」を勢いよくプレーし、会場は一気にホットなムード。

担当講師のディエゴ・リヴェラ(As)のコメント
「耳を使ってパフォーマンスすること、ダイナミクス(強弱)を付けた演奏を聴き手に届けること、何をリスナーに伝えたいのか、といったことを心に持ち続けてプレーする大切さを学んだ成果が表れていました。この4日間、どんどん上達するみんなと過ごせて本当に楽しかったです」

グループ2<Clark Terry Ensemble>

トム・アデアが作詞し、ジャズ・ヴォーカリストのマット・デニスが作曲したスタンダード・ナンバー「Everything Happens To Me」をしっとりとバラードで披露し、続く「Big Alice」(ジャズ・ピアニストのドン・プレーン作曲)はパワフルなドラム・ソロで口火を切り、ラストまでエキサイト!

担当講師のベニー・ベナック(Tp、Vo)のコメント(通訳は、担当講師も兼任する特別顧問の守屋純子)
「エネルギッシュで楽しさもある偉大なるジャズ・トランペッター、クラーク・テリーの精神を胸にプレーして欲しいと思い、グループ名を決めました。バラエティに富んだアレンジを見事に演奏しましたね。大成功だと思います!」

グループ3<Q Tippers>

ジャズ・ピアニストのハービー・ハンコックが作曲した「Driftin’」をグル
ーブ感いっぱいに演奏し、ヴォーカリストをフィーチャ―したジャズ・スタンダード・ナンバー「Speak Low」へと続きます。エンディングではメンバー全員が意表を突いて“Seiko Jazz”と叫び、ステージも客席も大盛り上がり!

担当講師のクインシー・デイヴィス(Dr)のコメント
「(日本語で)すごい!自分のためではなく、音楽のために頑張ってくれて本当にありがとう。これからもジャズを続けていってください」

グループ4<Shey-Tee's>

ホーン・アンサンブルが美しいイントロからエモーショナルな歌唱へと展開したスタンダード・ソング「My One and Only Love」、ウネリのある演奏を会場に響き渡らせた「Ugetsu」(ジャズ・ピアニスト、シダー・ウォルトン作曲)で拍手喝采。

担当講師のシェネル・ジョンズ(Vo)のコメント
「どんどん進化していく過程が見ることをできて本当にうれしかったです」
担当講師の大林武司(P)のコメント
「全力で学ぼうという皆さんの姿勢がとてもまぶしい、あっという間の4日間でした。チーム一丸となって情熱の炎を大きく燃やすようなアンサンブル、とてもカッコよかったです」

グループ5<Nippon Soul>

ミディアム・テンポのスウィングによるスタンダード曲「Just Friends」でジャズ・エッセンスをたっぷりと表現し、受講生の佐々木諒太(Ts)さん作曲の「Do You Wanna Remember」ではメンバーの個性とグループの一体感をアプローチ。

担当講師のヨタム・シルバースタイン(Gt)のコメント
「ぼくが伝えたいことを演奏の中で表現してくれてありがとう。これから、色々なステージ上で思う存分楽しんでいってください」
担当講師の中村恭士(B)のコメント
「僕が1番、怖い先生だったと思いますけれど、みなさん、よく耐えてくれました(笑)。今、素晴らしい演奏を聞けてとてもうれしいです」

スモール・アンサンブルの様子
撮影:amigraphy

ガラコンサートのトリを飾った、華やかでダイナミックなビッグバンド演奏

ガラコンサートのラストはビッグバンドによる演奏です。カリキュラムが1日短縮したことでリハーサルが1回減ってしまい、ある意味、ぶっつけ本番に近い状態で臨んだ受講生たちでしたが、この日限りの演奏を思う存分、楽しんでいるようでした。まずは、守屋がリー・モーガン(Tp)に抱いているイメージを曲で表した「Soulful, Mr Morgan」で始まり、ジョージ・ガーシュウィンが生んだ名曲「Summertime」(編曲:守屋)をプレー。続いて、講師リーダーのマイケル・ディーズ(Tb)のコンダクトによるJ.J.ジョンソン(Tb)作曲の「Little Dave」に続き、ラストはディエゴ・リヴェラがアレンジしたウェイン・ショーター作曲「Hammerhead」、大林武司のオリジナル曲「New Century」で大団円。いずれも難曲といえる楽曲ばかりでしたが、短期間にこんなにも心を震わす演奏を繰り広げるとは、まさに驚がく。講師の愛ある指導と受講生たちの努力が実を結んだ瞬間が、そこにありました。

ビッグ・バンド・アンサンブルの様子
撮影:amigraphy

歓喜に沸いた表彰式

ここからは表彰式です。
受講生たちの演奏が全て終わり、講師リーダーのマイケル・ディーズから4日間の総評が伝えられました。
「今年は(台風の影響もあって)特別バージョンのSeiko Summer Jazz Campになりましたが、皆さんの温かい気持ちとレベルの高さを実感し、しかも、音楽に対して愛とリスペクトを持っていることを演奏からうかがえてとてもうれしいです」

Seiko Summer Jazz Camp 2024の受賞者、受賞グループは以下の通りです。

【最優秀賞-Most Outstanding Student Award-】

ベース 町田類さん

Seiko Summer Jazz Camp 2024の受講生の中でもっとも優れたプレーヤーひとりに贈られる<最優秀賞>。受賞者はマイケル・ディーズと中村恭士から発表があり、セイコーグループ株式会社の助川部長からトロフィーと副賞のセイコーアストロン、さらに2025年6月にアメリカのノースカロライナ州Brevard で開催される予定のジャズ・キャンプ『Jazz Institute at Brevard Music Center』で約2週間学べる参加権が授与されました。

町田さん「これまでぼくは賞というモノに全く縁がなかったので信じられない気持ちでいっぱいです。今回、Seiko Summer Jazz Camp 2024に参加して本当に多くの学びがありました。演奏技術にかんすることはもちろん、ミュージシャンとしてのあり方など様々なことを吸収しました。今、僕は大学3年生ですが、卒業したらアメリカに行って音楽を学びたいという指標もできました」

【特別賞- Special Recognition Award-】

トランペット 國府方章弘さん

将来のジャズ・シーンを担うニュー・ホープに贈られる<特別賞>。日本を代表する今は亡き音楽家でSeiko Summer Jazz Campのチェアマン、前田憲男氏をしのんで創設された賞はベニー・ベナックから受賞者が告げられ、トロフィーと副賞のセイコー5スポーツが贈られました。

國府方さん「9月からニューヨークで音楽活動をスタートさせます。今回学んだことを胸に、第一線で活躍されているミュージシャンの方々に少しでも近づけるよう、頑張りたいと思っています」

【スピリット・オブ・ジャズ賞-Spirit of Jazz Award-】

ドラム 早川紗世さん

最もジャズ・スピリッツにあふれた演奏を繰り広げたプレーヤーに贈られる<スピリッツ・オブ・ジャズ賞>。クインシー・デイヴィスからトロフィーと副賞のセイコー5スポーツが手渡されました。

早川さん「とても充実した4日間でしたし、今後の練習課題もたくさん見つけられました。意欲が高まっているので、それを持続させ、よりよいプレーヤーになれるように頑張りたいです」

【優秀賞- Best Arrangement & Composition Award -】

ピアノ 川人唯さん

受講生から提出された作・編曲作の中からから最も優れた楽曲の作者に贈られる<ベスト・アレンジ&コンポジション賞>。守屋純子からトロフィーと副賞のマルチサウンドクロックが手渡されました。

川人さん「作曲することがすごく好きで、普段からジャンルを問わずに書いていましたが、これまで特に発表する場がなかったので、今回、チャレンジして本当によかったです。作編曲賞をいただき、自分自身の方向性も見つけられたような気がしています」

【優秀賞-Most Improved Award-】

ギター 堀田美紗子さん
ドラム 後藤龍太郎さん

4日間で著しい成長を遂げた受講生2名に贈られる<優秀賞>。クインシー・ディヴィスからトロフィーと副賞のセイコーのマルチサウンドクロック(Seiko Summer Jazz Campのロゴが入った特別バージョン)が手渡されました。

堀田さん「2年前に応募した時はオーディションで落ちてしまい、今回は再チャレンジでした。それだけにこのような賞もいただけて本当に嬉しいです。いずれは海外のミュージシャンと音楽で自由に会話ができるようになりたいですね」

後藤さん「共演者の演奏をどのように聞けばいいのか、この4日間で理解できたように感じています。今後はそこから発展して、色々なことに挑戦しながら音楽と真摯に向き合っていきたいです」

【ベストグループ賞】

<Q Tippers>(担当講師:クインシー・デイヴィス)

トランペット 國府方章弘さん
サックス 村田天空さん
トロンボーン 田中悠惟さん
ピアノ 河野真貴さん
ギター 堀田美紗子さん
ベース 吉良海人さん
ドラム 早川紗世さん
ヴォーカル 青柳伸哉さん

今年新設された<ベスト・グループ賞>は、選考者の講師リーダー、マイケル・ディーズからメダルと副賞のセイコーのミニスポーツタイマークロックが授与されました。

【ヤマハ賞】

トランペット 坂井奈々香さん
テナー・サックス 佐々木諒太さん
トロンボーン 島尻康生さん

株式会社ヤマハミュージックジャパンから優れた演奏を披露したトランペット奏者、サックス奏者、トロンボーン奏者各1名に贈られた<ヤマハ賞>。
同社の米田倫之氏より副賞の最上級モデルのワイヤレス・イヤフォンが手渡されました。

受賞した受講生たち
撮影:amigraphy
Seiko Summer Jazz Camp 2024の集合写真
撮影:amigraphy

講師陣の白熱ライブでフィニッシュ!

授賞式後には、講師陣がスペシャル・ライブを開催!曲はマイケル・ディーズがSeiko Summer Jazz Campのために書いた、タイトルもずばり『Seiko Time』。“これぞ、ジャズ!”と言わんばかりのプレーが始まるとみるみる受講生の目が輝き、口角がアップ。身を乗り出しながら手拍子をして、それぞれのソロが終わる度に“ウォ~!”と歓声が上がります。Seiko Summer Jazz Camp 2024のテーマである“リズムこそ命”を代弁した白熱のライブは最高潮の盛り上がりをみせ、全行程が終了しました。

Seiko Summer Jazz Camp 2024の受講生たちは、今後、それぞれのフィールドで存分にプレーし、ジャズの醍醐味を多くのリスナーに伝えてくれるはずです。さあ、来年は記念すべき10回目となるSeiko Summer Jazz Camp。次のジャズ・チャレンジャーは一体、どんなアニバーサリー・ドラマを生み出してくれるのか、今から楽しみになってきました。

演奏する講師
撮影:amigraphy
演奏する講師
撮影:amigraphy

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