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ギタリスト・堀田美紗子が二度目の応募で掴んだ優秀賞までの道のり

Interview

ギタリスト・堀田美紗子が二度目の応募で掴んだ優秀賞までの道のり

2024年参加者 / ギター 堀田美紗子

  • 2025/03/18
  • 2025/03/18

Profile

  • 堀田美紗子(ほりた みさこ)

    堀田美紗子(ほりた みさこ)

    堀田美紗子(ほりた みさこ)

    2002年生まれ。高校2年生でギターに出会い、2021年に尚美ミュージックカレッジ専門学校ジャズ・ポピュラー学科に入学。2022年10月にはすみだジャズフェスティバルにて、同校代表としてバンドに参加。その演奏で鈴木直人氏から高い評価を受ける。また、同年に、ギター、ベース、ドラムのトリオ編成からなる堀田Trioを結成し、3度のライブを成功させた。ジャズ・ポピュラー学科卒業制作では、堀田Trioのメンバーに加え、同校非常勤講師の佐藤洋介先生、石田衛先生と共にオリジナル曲を録音。2023年には同校音楽総合アカデミー学科に編入。同校非常勤講師である宮本裕史先生がリーダーとなるバンドの一員として、3度ライブに出演した。2024年、Seiko Summer Jazz Camp に参加。ベストグループ賞と優秀賞の2つの賞を受賞する。

尚美ミュージックカレッジ専門学校(以下、尚美)に在学中の堀田美紗子(Gt)さんは、Seiko Summer Jazz Camp 2024で優秀賞を獲得し、約半年後の2025年2月16日に東京・高田馬場にある<Café Cotton Club>でSeiko Summer Jazz Camp Graduates Live in Tokyo Vol.39に出演しました。自らがリーダーを務めるカルテットで熱演を披露した後、ギター&ジャズとの出会いやSeiko Summer Jazz Camp(以下、SeikoSJC)に参加した際の忘れられないエピソードについて語ってくれました。

取材・文:菅野聖
撮影:樋口勇一郎
取材日:2025年2月16日

オープンキャンパスが分岐点

ギターは高校2年生から弾いています。軽音楽部に入部したのがきっかけで、最初はヤマハのアコースティック・ギターを購入しました。そのすぐ後に、アンプもセットになっている初心者向けのエレキギターを買って、バンド仲間とJ-POPのカバーを色々と演奏していたんです。次第に“私は音楽で生きていく”というような謎の気合いが生まれ(笑)、高校卒業後は音楽の専門学校に通いたいと思うようになりました。それで、尚美のオープンキャンパスに参加し、ジャムセッションも体験してみたらとても楽しかったので入学を決意したのです。ちなみに、セッションで演奏した曲はジャコ・パストリアス(B)の「ザ・チキン」でしたが、それまでジャズやフュージョンを全く聴いたことがなかったので“こういう音楽があるんだ”と驚きましたね。つまり、ジャズとの出会いは尚美のオープンキャンパスということになりますが、本格的にハマったのはもう少し先になります。というのも、入学前にとりあえずジャズの代表的な楽曲を聴いてみたものの、全然ピンとこなくて聴く気にならなかったんですよ(笑)。ところが、学校に通い出して少したった頃、ビル・エヴァンス(P)のアルバム『ワルツ・フォー・デビイ』を聴いて“ジャズっていいかも”と思うようになりました。

堀田美紗子さん
photo by Yuichiro Higuchi

ジャズ・ギターに開眼したきっかけ

尚美に通い出して半年を過ぎた頃、今も使っているギター(PRS)を買いました。高校時代にハマっていたバンド、ONE OK ROCKのギター、Toruさんの影響です。探したら、Hollowbodyというジャズ用のギターがあったのでコレしかない!と手に入れ、その頃から私はエフェクターなどを使わずにギター1本で勝負できるような音楽、要はジャズ・ギターを本格的に演奏したいと思うようになりました。ジャズ・ギタリストで最初にグッときたのはジミー・ブルーノです。アルバム『ライヴ・アット・バードランド』の「アイ・ヒア・ミュージック」に魅了され、同時にビバップにも目覚めました。その後、様々なギタリストの演奏を聴きまくり、私の推し、ピーター・バーンスタインと出会います。演奏はもちろん、動画サイトの映像も繰り返し見てコピーし、これぞ“ザー・ピーター”というフレーズが弾けるようになるまで練習を重ね、今に至っているんです。

ギターを弾く堀田美紗子さん
photo by Yuichiro Higuchi

ギター人生を賭けた再応募

SeikoSJCには専門学校の2年生の時に応募しました。選考に通ればジャズの本場、アメリカの現役ミュージシャンに直接教えていただけるという貴重な機会を得られるので、これは挑戦するしかないと思ったものの、その頃はまだジャズも全然わかっていなかったので、落選した時はショックというより“やっぱり駄目だったか”という気分でした。ちょうどその頃から<ジャズスポット・イントロ>(東京・高田馬場)で行なわれているセッションに顔を出すようになり、同世代の上手いプレーヤーの存在を知って衝撃を受け、以前にも増してコツコツと練習するようになりました。セッションも積極的に参加し、学校以外の場でも演奏する時間を増やし、真剣にギターと向き合った日々を過ごしている中、Seiko Summer Jazz Camp 2024に再応募することにしたのです。二度目も落選したらギターをやめようと自分なりの覚悟を持った応募でしたが、晴れて参加できることになり、本当にうれしかったです。SeikoSJCでは多くの学びと出会いがあり、自分の世界が広がりましたね。みんなと音楽を楽しみたいという想いは参加する前よりも強くなったように感じています。個人的にうれしかったのは、私の演奏が終わった後にヨタム・シルバースタイン(Gt)先生から「好きなギタリストは誰?」と質問されたので「ピーター・バーンスタインです」と答えたら「I Know」(だよね)と笑顔でおっしゃってくれたこと。私の演奏からピーターの影響を感じてもらえたのですから、こんなにもうれしいことはありません。生きていてよかったと思いましたね。ありがたいことに私は優秀賞の他に<ベストグループ賞>も受賞することができました。これはクインシー・デイヴィス(Dr)先生が担当講師を務めてくださった<Q Tippers>グループのチームワークによるものです。今、振り返ってもあのメンバーは最高でした。みんなにまた会いたいですし、すぐにでも一緒に演奏したいです。

Seiko Summer Jazz Camp 2024の様子
photo by amigraphy
堀田美紗子さん、ヨタム・シルバースタイン氏
photo by amigraphy

夢は渡米

推しはピーター・バーンスタインですが、テナーサックス奏者、エリック・アレキサンダーも大好きで、来日ライブの終演後に私のギターにサインをしてもらいました。そんな憧れのミュージシャンが拠点としているニューヨークに行くのが今の夢です。問題は費用ですね。本当は留学したいですが、ちょっと厳しそうなので今、悩んでいるんですよ。結果的に観光旅行になったとしても25歳までにはニューヨークに行くと決めています。

エリック・アレキサンダーのサインが入ったギター
photo by Yuichiro Higuchi

オーディション用の動画撮影も良い経験

Seiko Summer Jazz Campに応募する際、課題曲の演奏動画を撮らなければなりません。スタジオを借りて、時間制限のある中で“これが自分の作品です”というベスト・プレイを残すのですから当然、プレッシャーがあり、ものすごく緊張しました。だからこそ、勉強になったと今は思っています。応募自体も良い経験になりますので、意欲のある方はぜひ、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

堀田美紗子カルテット
photo by Yuichiro Higuchi

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