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Interview
ドラマー・早川紗世が得た、ジャズの背景を知ることの大切さ
2024年参加者 / ドラム 早川紗世
- 2025/03/28
- 2025/03/28
Profile
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早川紗世(はやかわ さよ)
早川紗世(はやかわ さよ)
1999年生まれ名古屋出身。12歳のときに部活でドラムを始める。大阪音楽大学短期大学部ジャズコースに入学し、東敏之に師事。同大学を首席で卒業。より実践に特化した大阪音楽大学短期大学部専攻科ジャズコースに編入し、卒業。在学中より演奏活動を始め、宝塚歌劇団のオーケストラにも参加。神戸大学KOBE Mussoc Jazz Orchestra2019,2020に所属。Seiko Summer Jazz Camp 2024に参加し、スピリット・オブ・ジャズ賞を受賞。現在は京阪神を中心に演奏している。
大阪音楽大学短期大学部ジャズコースで学んだ後に参加したSeiko Summer Jazz Camp 2024でスピリット・オブ・ジャズ賞を受賞。現在、関西を中心に演奏活動を展開するジャズ・ドラマーの早川紗世さん。ジャズやドラムに魅せられた理由や、Seiko Summer Jazz Camp 2024に参加して得たこと、今後の展望などについて話していただきました。
取材・文:早田和音
撮影:内海裕之、amigraphy
取材日:2025年3月2日
ドラムやジャズとの出会い
父がドラムの講師で、母がピアノの講師という家庭に生まれたので、音楽はとても身近な存在でした。最初に触れた楽器はピアノです。2~3歳の頃に習い始め、高校2年生までクラシック・ピアノを続けていました。ドラムを始めたのは中学校に進学してからで、そこでジャズにも触れることになりました。きっかけになったのはその中学校の吹奏楽部。中学でも音楽をやりたいと思っていたので、試しに吹奏楽部を見学しに行ったんです。そこは名前こそ吹奏楽部なんですが、演奏しているのはジャズのビッグバンドという部活でした。行ってみたら、先輩の皆さんがものすごくカッコよくて!私の進学した学校って、中高一貫校なんです。だから中学1年生の目には高校生の先輩たちがすごく大人に見えて、しかも演奏もめちゃめちゃカッコいい。その場で入部を決心しました。最初はサックスが第1希望だったんですが、先輩から、「サックスは人数が多いから演奏できる曲が少なくなっちゃうかもよ」って言われてしまって。私としてはいっぱい演奏したかったので、他の楽器にしようと思ってドラムを選んだんです。ドラムだったら家にもあるし、高い楽器を買わなくてもスティックさえ買えば始められる。それに何か分からないことがあれば、お父さんに教えてもらえばいいやと(笑)。その部活でジャズが大好きになり、その後、大阪音楽大学短期大学部ジャズコースに進みました。

尻込みする気持ちを振り切ってのSeiko Summer Jazz Camp 2024参加決意
Seiko Summer Jazz Camp(以下SeikoSJC)のことを知ったのは、大学に進んでから。2021~22年頃かな。先輩たちも参加していたので、自然と知りました。とはいえ、私が参加を決めたのは2024年になってから。それまではちゅうちょするような気持ちがあったんです。自分の演奏に対する自信もありませんでしたし、すごい人たちがいっぱい参加している中で順位が付けられてしまうのではないかと思い、決心を先送りにしていました。その尻込みする気持ちを消し去ってくれたのは、自分の音楽を高めたいという気持ちでした。その頃は、地元のライブハウスで演奏するようになっていたのですが、活動していくうちに、もっと上の段階に行きたい、もっと音楽の輪を広げたいという気持ちが芽生えてきました。演奏活動をしているといっても、私が活動していたのは関西エリア中心。東京をはじめとするさまざまな同世代ジャズ・ミュージシャンの方たちと知り合ってもっと刺激を受けたいという気持ちが強くなったんです。それと参加を決意したもうひとつの要因は年齢です。SeikoSJCの応募資格は16歳~25歳。尻込みを続けていた25歳の私にとって最後のチャンス。これを逃したら永遠に参加することはできませんから(笑)

Seiko Summer Jazz Campで学んだジャズの精神性
SeikoSJCでは本当にいろいろなことを学ぶことができました。技術的なことはもちろんなのですが、自分にとって大きかったのが、ジャズの歴史や精神に関するレクチャーでした。ジャズが生まれてきた源にある奴隷制や人種差別、そして男女差別や世界大戦などの社会的背景というのは、知識としては知っていましたが、そうしたものを踏まえたうえで演奏されている講師のミュージシャンの方々から語られるお話はものすごく胸に響いてきて。今まで自分はジャズという音楽のうわべだけを演奏していたのだと気づかされました。自分が演奏する曲の時代背景や歌詞などを把握しているかどうかで、演奏の深みや重みが違ってくるということに気づけたのは大きな収穫であり、今後の自分にとっての大きな課題だと思えました。

見えてきた自分の課題と今後の展望
そうしたキャンプを終えた後にスピリット・オブ・ジャズ賞をいただいた時はビックリしましたけど、本当にうれしかったです。なにより、その賞の名前が私には心地よくて(笑)。先ほどもお話ししたようにジャズの精神性の大切さに気付けたSeikoSJCの中でこの賞をいただけたのは本当に光栄なことだと思います。とはいえ、今の私の中にあるのは今後も精進を続けたいという気持ち。SeikoSJC 2024から時間がたった今でも、その時に教えていただいたことを強烈に実感することがあるんです。今年1月にやったライブの演奏中でのことなんですが、SeikoSJCで教えてもらった演奏時のマインドの持ち方のお話が思い出されて。“音楽的に向き合って、仲間という意識を持って演奏すると、全員の音楽がひとつになって、みんなで進むことができる”っていうのは、このことだったんだと思えたんです。その瞬間、大きな音楽の道が開けてきたような感じがしました。今後はSeikoSJCで学んだことを糧にして東京へ、さらにニューヨークへも目を向けていきたいと思っています。

経験者だからこそ分かる踏み出すことの大切さ
少しでも迷っている人がいたら、ぜひとも応募してくださいって言ってあげたいです。自信がないとか、厳しいんじゃないかとかいうような心配は、私も持っていたのでよく分かるんですが、そういうのはぜんぜん問題ありません。受講すれば必ずプラスになります。マイケル・ディーズさんやクインシー・デイヴィスさん、中村恭士さんたちのような素晴らしいミュージシャンたちから直に教えてもらえる機会なんて他にないですから。チャンスを逃さず25歳までに受講してほしいと思います。
