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短期集中のため講師にすぐ質問でき、同世代のプレイヤーに刺激を受けながら音楽を学べる時間を体験

Interview

短期集中のため講師にすぐ質問でき、同世代のプレイヤーに刺激を受けながら音楽を学べる時間を体験

2016 参加者 / テナ―サックス 曽我部 泰紀

Profile

  • 曽我部 泰紀(ソガベ ヤスキ)

    曽我部 泰紀(ソガベ ヤスキ)

    曽我部 泰紀(ソガベ ヤスキ)

    大阪府出身、25歳。小学生の時に聴いたスタンリー・タレンタインのアルバム『The Spoiler』に心を奪われ、テナ―サックスを始める。
    大阪音楽大学在学中に「Seiko Summer Jazz Camp(以下ジャズキャンプ) 2016」に参加。大学卒業後は大阪を中心に活動。2019年7月より拠点を東京へ。
    現在は、山田丈造クインテットなど複数のグループで活動中。

テナーサックス奏者として活動する曽我部さんは、現在25歳。大阪の音楽大学に通っていた21歳のとき、「Seiko Summer Jazz Camp 2016 」に参加した。
「多くの人がキャンプやコンクールにはどんどん参加したほうがいい。音楽界も盛り上がる」と、大きな世界を見据えつつ、音楽の未来を語る。
「他人との繋がりって全部音楽が関係している人ばかり」という彼の人生において、このジャズキャンプも「これまで僕のなかでは、これが一番大きかったという音楽アクションはない。でも、これがあったからこうなったっていうことがたくさんある。その中のひとつとしては大事こと」という。
そんないくつもの連鎖のなかの出会いやインスピレーションを糧にして、音楽を奏でるプレイヤーだ。

テナ―サックスは「フレーズやテクニックより特に音色が大切だと思う」

母がピアノ講師だったこともあり、子供の頃はピアノを習っていた。
ジャズとの出会いは、小学生の高学年のときに、近所のCDショップの閉店セールに駆け込んで買ったスタンリー・タレンタインのCDだった。「そのテナ―サックスがめちゃくちゃかっこよくて。男気があり、ゴリっと野太い感じがすごい好きで」。当時ずっと聴いていたという。
そのときから「テナーサックスといえばスタンリー・タレンタイン」という思いは、今も一貫して感じている。自分のプレイスタイルにも共通する部分はあるようだ。「歌うようには心がけています。フレーズやテクニックより音色が一番大事な楽器」。

中学校に進学すると同時に吹奏楽部に入り、強い意思でテナーサックスを選んだ。
ただ中学校の部活動は、週に2、3回の練習しかなく、それほど活発ではなかった。
そのため高校はブラスバンド部が有名な学校を選ぶ。そこでは「普通はこんなに練習するんだ」と思ったそう。
そのまま大きな迷いもなく音楽の道に進んでいく。「ふわふわして。そのときそのときに決めて今に至る。基本的には勉強してこなかった人生だから、音大にしかいけるところがなかったので(笑)」と謙遜する。「自分としてはジャズがやりたかったんで、大学でジャズ科に進みました」。
音楽大学では河村英樹氏に師事。「河村先生の学校の授業はもちろん、学校が終わったあと、先生が毎月演奏しているライブにも足しげく通ったんですよね。そのライブハウスでアルバイトもして」。学校で授業を受け、放課後は練習、ライブハウスでバイトをしてと、音楽にどっぷり浸った大学生活を送っていた。
そんな中で「知り合いの方から“こういうキャンプがある。メンバーも同世代の人が来ると思うから受けてみたらどうだ”って言われて。楽しそうだなという気持ちで」ジャズキャンプに応募した。「東京に行ったこともなかったし。同世代が多いから繋がれるんじゃないか。何か楽しいことがあるんじゃないかと」。人との繋がりでジャズキャンプに導かれた。

プロの方でも同じような悩みを抱えていて、自分と同じなんだなと。

ジャズキャンプでは、音楽とプライベートのオンオフがはっきりしている環境だったのがよい方向に向かったという。「すごい楽しかったです。キャンプによっては、(一緒に)寝泊りがあるかと思うんですけど、ジャズキャンプはそれがない分、余計なことに気を使わなくてすむので、すごく気楽に音楽を学べました」。そこが混在すると「せっかく音楽でいいことを言ってくれているのに、頭に入ってこないようなこともある」という。
講師に質問したなかで特に記憶に残っているのは、「ビッグバンドでは、テナ―サックスは何を吹いているか分からない。特にテナーの2番はよくわからない気になる、という質問をしたんですが、講師の方から“それはよくわかるね”と。練習法でも、これが駄目ならこっちの方法でやってとかやっていて。プロの方でも同じような悩みを抱えていて、自分と同じなんだなと思いました。練習量がすごいだけであって」。また、キャンプで教わった基礎練習法は今でも続けていることもあるという。
普通の学校の授業は、次の授業まで1週間空くこともあるが、このジャズキャンプは4日間。
ある意味、濃厚な集中レッスンのようなものだ。その場で気が済むまで質問を受け付けてくれる。そんな雰囲気なので「次こういう質問しようということがすぐできた。それも自分に合っていた」ともいう。

話題にもなり音楽界も盛り上がる。 ジャズを知らないひとたちも知るきっかけが増える。

アンサンブルの授業で、以前にライブハウスで出会ったことのある同齢のプレイヤーと再会した。 「彼、めちゃくちゃ上手で、初めて聴いたときに、すげーかっこいいなと思ったんですよね。ジャズキャンプで再会して、久しぶりに聴いたら、やっぱりめちゃくちゃ上手。オリジナル曲の授業でも、持ってきた曲がすごいキレイだった。同い年でこんなに上手い奴がおるんや。もっと上手にならなあかんなって思いました。頑張ろうって思いながらの4日間だった気がします」。
元来、音楽は他人と比較したり、他人の目や評価を基準に生み出すものではない。
ただキャンプやコンテストに参加すると他人を意識する。「ライバル視しながら他のひとの演奏を聴く。(他人の演奏を)自分で照らし合わせてなんぼっていうか・・・。そういう視点で聴くもの、ある意味大事なのかと思います」。そういう出会いや比較から生まれる創造の広がりがあるのも事実なのだ。
またキャンプやコンクールには「極力参加した方がいい」と考えているという。
それは単に個人のプレイにおいてのみの問題ではない。「こういったことが開催されると話題にもなり音楽界も盛り上がる。ファンも付く。どんどん盛り上がることによって、音楽に全く関係ないひとや全くジャズを知らない人たちも知るきっかけが増える。例えば、お笑いの「M-1グランプリ」って盛り上がっているじゃないですか。そこから入ってお笑いが好きになる人がいる。音楽もキャンプやコンクールとかがたくさんあって、多くの人が、“やってみよう、やったらこういう世界があった、こういう人がいた、こういうことがあったんだ。”となって、プレイヤーもファンも増えたら嬉しいなと思いますね」。キャンプやコンクールが増え、ファンが増え、プレイヤーが増え、音楽界が盛り上がる。そんな連鎖反応を考えている。「音楽を次世代に残したい。続けていきたい」そのために。

誰かのためにとか、こう思っていることを誰かに伝えたいとか。 そうやって誰かにずっと繋がれたこと、それが一番。

大学3回生のころからビッグバンドに入って月に2、3回のライブ活動を始めた。
4回生になってからは、コンボ編成でリーダーを務め、とあるライブハウスで定期的にライブを行うようになる。「ライブの度にメンバーを集めたり。スタンダードの曲をやって需要を高めつつも、3回に1回くらいは、固定のメンバーで自分のオリジナル曲をいっぱいやる場面も作った」。そして2019年の7月に上京。「20代の内に最初のCDを出したい」というのが、今の目標だ。そして「一生続けるつもりでいるので、そのために何か作りたいとは思ってます」と語った。
最近の世情の中で、気が付いたことがある。「ライブするのが好きですね。最近特に思います。自粛のため当面一人で練習するので、自分の演奏したことに対して反応は絶対に返ってこない。そういうやりとりを、めっちゃ楽しんでいたんだなぁと」。それは単純に、ひとときのコール&レスポンスではなく、もっと深い繋がりを求めているように聞こえた。
「高校生以降、他人との繋がりって音楽が関係している人ばっかりなんですよね。音楽はそこかなって思います。CDを作りたいと思わせくれたのも、そういった人との繋がりの中でだし」。音楽による人との繋がりが、彼の人生の道標みたいなものを生み出してくれてきた。

「誰かのためにとか、思っていることを誰かに伝えたいとか。そういうことが多いですね。そうやって誰かにずっと繋がれたこと、それが一番、音楽のよかったことですね」。自分が受けたことを、今度は誰かに返したい。それの積み重ねが彼の音楽であり人生のように思えた。

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