Magazine

Seiko Summer Jazz Camp 2017の最優秀賞受賞者が語る自身の過去・現在・未来

Interview

Seiko Summer Jazz Camp 2017の最優秀賞受賞者が語る自身の過去・現在・未来

2017参加者 / ギター 大友 一樹

Profile

  • 大友 一樹(オオトモ カズキ)

    大友 一樹(オオトモ カズキ)

    大友 一樹(オオトモ カズキ)

    1994年生まれ。子供時代に10年間バイオリンを学び、17歳からギターをスタート。東京大学在学中にジャズ研究会に在籍し、慶應義塾大学ライト・ミュージック・ソサイエティの一員として山野ビッグバンド・ジャズコンテストで最優秀賞を受賞。宮之上貴昭(G)、アーロン・パークス(P)と共演。Seiko Summer Jazz Camp 2017で最優秀賞を受賞。2020年、赤坂ジャズギターコンテストでグランプリに輝く。現在、東京大学工学部大学院で研究生活をしながら、音楽活動を継続中。

ジョー・パスでジャズに出会い、ソロ・ギターの世界を発見

2016年に第1回が開催されたSeiko Summer Jazz Camp(以下SSJC)の歴史で、ギタリストとして初めて2017年に最優秀賞を受賞したのが大友一樹さんだ。慶應義塾大学ライトミュージック・ソサイエティのメンバーを中心に結成されたコンテンポラリー・ビッグ・バンド、福田組に在籍してトロンボーン奏者、マーシャル・ジルクスと共演。またピアニスト布施音人のトリオでもライブ活動を行っている。2020年は赤坂ジャズギターコンテストで応募総数45名の頂点に立ち、将来性豊かな才能が認められた大友さんに、自身の過去・現在・未来を語ってもらった。

「3歳から中学生までバイオリンをやっていました。当時聴いていたのはクラシックとポップスが中心。その後しばらく楽器をやめていて、17歳の時に自宅にあったアコースティックギターを弾き始めました。最初はコード譜にしたがって弾いていたのですが、ギター&ボーカルよりもインストゥルメンタルを探していた時に、伴奏もメロディも一人で弾く“ソロ・ギター”を発見しました。それがジャズとの出会いであり、ソロ・ギターの達人であるジョー・パスとの出会いだったのです。まさに衝撃的でした。ジョー・パスの次に集中したのがウェス・モンゴメリー(G)。今でも好きです。最近は今、活躍しているミュージシャンに興味があって、SSJCで指導していただいたヨタム・シルバースタイン(G)を始めとするニューヨークのギタリストのコピーをしています」

SSJCを通じて音楽に対する向き合い方が変わりました

ライトミュージックのメンバーが参加していたことで、SSJCの存在を知っていた大友さん。2017年度に参加して、ヨタム・シルバースタインから直接指導を受けたことが大きな刺激になったようだ。
「ヨタムからは〈アウト・オブ・ノーホエア〉〈オン・グリーン・ドルフィン・ストリート〉等のスタンダード・ナンバーを提案されたのですが、どの曲を演奏するにしても、その曲のルーツと歌詞を知っているか?と、すべての曲に対して聞かれました。しかしその時の自分はあまり答えられなかった。それでは曲をきちんと理解することができないし、理解することで演奏に生かせると学びました。SSJCを通じて音楽に対する向き合い方が変わったし、ニューヨークで活躍するプレイヤーがどういう気持ちで取り組んでいるのかを感じることができました。もっと真摯に向き合わないと、深みのあるところへは行けないのだと痛感しましたね」。

参加者42名で開催された2017年度に最優秀賞を獲得した大友さんは、「自分が最優秀でなくてもよかったくらい、優秀な参加者が多かった」と謙遜するが、以前から心がけていた「自分なりのメロディを訴えることを表現できた」のが受賞理由ではないかと考える。

表現に対する考え方は自分なりに進歩がありました

SSJC 2017で最高の栄誉に輝いた大友さんは、それに満足することなく自分のスキルを磨き続けている。技巧的な追求ではなく、メロディをきちんと訴えて自分の強みを表現すること。また力強さをもっと外に出して、ダイレクトに表現することが自分の課題だと思って、取り組んでいる。
「演奏方法は色々あって、速弾きだけが熱量の表現方法ではないけれど、熱量は意識して表現しないと観客には伝わらないと思っています。基礎的な技術力は上がっていると思いつつ、色々な感情を表現するための、表現に対する考え方は自分なりに進歩がありました。
インターネットの動画でトップ・プレイヤーの演奏をたくさん観ています。それぞれの演奏で一番訴えかける瞬間に至るプロセス、その後どのように演奏が進むのか。1曲の中の流れの作り方に注意して観ます。気になる部分を自分の演奏でもトライしてみます。表現の幅が広いパット・メセニーの演奏は参考になりますね」

豪華な講師と触れ合いつつ教えてもらえる、世界的にも珍しいジャズ・キャンプ

現在は福田組と布施音人トリオでライブ活動を行っており、2022年3月には大学院を修了予定。それまではまだメンバーを固定していないが、よく共演する人たちとギター・トリオを基本に2年間はリーダー・ライブをしっかりとやっていきたいと考えている。ギター・トリオとは「ジャズ・ギターの魅力が一番出る編成。コード楽器がギターだけで、編成が少ないのでベース、ドラムとのインタラクションができます。緻密さやカラーの出し方において、やりがいがある編成です」。
時間的に柔軟に働ける環境を確保しながら、音楽活動と両立させることを、今後10年間はチャレンジしたい、との思いを強くする大友さんに、将来のSSJCの参加者へのメッセージをうかがった。
「参加するためのオーディションはありますが、ここまで豪華な講師に4日間みっちりと触れ合いつつ教えてもらえるのは、世界的にも珍しい機会です。しかも無料で、日本に居ながらにしてニューヨークのプレイヤーと共演できる。すごくオススメしたいキャンプです」

Share