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セイコーわくわく音楽教室2025 ~Jazz編~ in 札幌|世界のトッププロと子供たちが音でつながった特別な時間

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セイコーわくわく音楽教室2025 ~Jazz編~ in 札幌|世界のトッププロと子供たちが音でつながった特別な時間

2025年8月2日 @札幌芸術の森

  • 2025/09/01
  • 2025/09/11

“時育®(ときいく)”と称して、未来を担う世代とサステナブルな社会のためにセイコーグループが取り組んでいる次世代育成活動のひとつ『セイコーわくわく音楽教室』は、プロのアーティストが全国各地に赴き、音楽好きな子供たちに直接レクチャーするプログラムです。生徒は、“札幌芸術の森”を拠点に活動している札幌ジュニアジャズスクールの在籍メンバーで、指導にあたったのはSeiko Summer Jazz Camp(以下、SeikoSJC )の講師陣です。学ぶ側と教える側が一体になったスペシャルな時間は大いに盛り上がり、今年も2回目となる『セイコーわくわく音楽教室2025 ~Jazz編~ in 札幌』が8月2日に開催されました。その模様をお伝えします。

スタートから和やかムード

まずは『セイコーわくわく音楽教室2025 ~Jazz編~ in 札幌』の講師紹介から始まりました。SeikoSJCが始まった2016年から毎年、手腕を発揮しているトップ・トロンボーン奏者で講師リーダーのマイケル・ディーズが生徒の目の前でいきなりトロンボーンを吹き鳴らし、これが挨拶と言わんばかりの豪快な音を会場に響き渡らせます。目を輝かせ、身を乗り出して聞いている生徒の中にはユニークなプレーに声を上げて笑い出す子もいるなど、早くもその場は和やかな空気が漂いました。

トランペットを吹くマイケル・ディーズ

「今すぐにでもみなさんの演奏を聞きたいです」と笑顔で生徒たちに語り掛け、その後、マイケルは他の講師をひとりひとり紹介。そして、「さっそく、演奏してください!」とゴー・サインを出します。元気よく「イエ~イ」と応えた札幌ジュニアジャズスクールのメンバーは自身の楽器を手にしてスタンバイ。
本来は小学生クラス(SJF Junior Jazz Orchestra)と中学生クラス(Club SJF)に分かれて毎週末、ビッグバンドの練習に励んでいる札幌ジュニアジャズスクールのメンバーですが、ここでは、参加した小中学生が肩を並べてアンサンブル(2人以上で演奏すること)を披露します。世界で大活躍中のジャズ・プレーヤーを前に、日ごろの成果を発揮するのは緊張するはず。と思いきや、1曲目にプレーしたジャズ・スタンダード曲「Alright、Okay、You Win」から勢いのある演奏を繰り広げ、講師陣は相好を崩していました。演奏が終わると両手をあげて拍手、拍手!

演奏する生徒たち
両手をあげて拍手する講師陣

2曲目は、日本が世界に誇るアルト・サックス奏者、渡辺貞夫氏が札幌ジュニアジャズスクールでワークショップを行った際に伝授したという楽曲「ハランベ」を演奏。10人の男の子がフロントに並び、ピアノのイントロを受けて手拍子をしながら大声で歌い出し、2コーラス目からは他のメンバーも立ち上がって大合唱。その後、大編成ならではの演奏やトロンボーン&トランペット・ソロも盛り込まれたアレンジで、最後はメンバー全員、アカペラでパフォーマンスをしていました。その時、トロンボーンの音色がうっすら聴こえたのですが、それは、マイケルが講師席でさり気なく奏でていたオブリガート(助奏)でした。その結果、「ハランベ」は一瞬ではありましたが、生徒とマイケルの即興共演となったのです。これぞジャズ!

合唱する生徒たち
メンバー全員でアカペラでパフォーマンスする生徒たち

講師からの具体的なアドバイス

札幌ジュニアジャズスクールの演奏が終わると講師ひとりひとりが感想及びアドバイスを伝えます。マイケルは「みなさんの素晴らしい演奏を聴き、私が子供の頃に親しんでいた曲を思い出しました」と言って、その曲を独唱し「声で歌うように楽器を演奏することはとても大切」とレクチャー。彼が口ずさんだフレーズをその場で生徒たちがリピートするレッスンも行い、締めくくりは歌うようにトロンボーンをソロで演奏しました。
テキサス大学オースティン校ジャズ研究科の学科長として後進の指導にも力を注いでいるディエゴ・リヴェラ (Ts)は「アンサンブルやグループで演奏する時は、他の人と合わせることに集中しがちですが、自分自身を表現することも大切です。楽器に支配されず、頭の中で考えたことが演奏できるように練習を重ねてください。ソロを上達させたければ、吹きたいフレーズを声に出して歌うこと」と言って、自らスキャット(意味を持たない”シュビドゥバ”のような音声を駆使し、即興で表現する歌唱法)をし、そのフレーズをすぐさまサックスで再現演奏。その後、サックス・プレーと生徒の歌声によるコール&レスポンス・タイムとなりました。

アドバイスするディエゴ・リヴェラ

今回が初来日となるジョセリン・グールド(Gt,Vo)は「Alright、Okay、You Win」を題材にアドバイス。「メロディが引き立つようにもう1度、演奏してみてください」と誘い、その生徒たちのプレーを聴いた後、「素晴らしいです!旋律以外の音を演奏している人は、今のように(メロディを引き立てるために)控えめな音量でプレーしてくださいね」と話していました。

アドバイスするジョセリン・グールド

ノース・テキサス大学のジャズ・ドラム准教授でもあるドラマーのクインシー・デイヴィスは(勉強中の)日本語で「踊ってみたい人はいますか?」と生徒に問い掛け、希望した4人の生徒さんたちと一緒に「Alright、Okay、You Win」の演奏に合わせてダンシング!そして「何故、踊って欲しかったか。それはこの音楽が元々、踊るための音楽だからです。演奏する時も自分が踊っているところをイメージすることは非常に大事」と言って、次は「ハランベ」をリズム・セクションだけで演奏させ、他の生徒たちは曲に乗ってカラダを揺らすように指示、次はカラダを揺らしながら全員で楽器を演奏するように伝え、ラストはクインシーを先頭に歩きながら生徒たちが演奏するというレッスンが行われました。

4人の生徒さんたちと一緒に踊るクインシー・デイヴィス
クインシーを先頭に歩きながら生徒たちが演奏する様子

今年初めてSeikoSJCの講師メンバーに加わった日本でも人気のピアニスト、ダン・ニマーは「今、43歳ですが、ピアノを弾いている時は童心に返ります。要は、子供の頃の気持ちを忘れないでいることは音楽をする上で、そして、これから生きていく上で非常に大切だと思っているのです」と語り、ピアノをひとり弾き始めました。そのグルーブあふれる演奏に反応し、生徒の顔は見る見るうちに高揚!

ピアノを演奏するダン・ニマーとピアノを囲む生徒たち

最後はSeikoSJC 2024の最優秀賞を受賞したベーシストの町田類さんが登場。「みなさんの演奏にとても感動しました。僕はこのような感動体験を何度も経験し、音楽がどんどん好きになりました」と言い、彼が演奏する上で大事にしていることを伝えていました。例えば“曲や歌詞の意味を理解して演奏すること”や“ダイナミクス(強弱)を意識すること”等々。曲のアレンジにも感銘を受けたと言って、普段、生徒たちに教えている札幌ジュニアジャズスクールの先生にも賛辞を送っていました。

アドバイスする町田類

生徒の至近距離でホットなプレー

生徒の質問に講師がわかかりやすく説明するQ&Aコーナーの後は講師による演奏が繰り広げられ、その曲はなんと、先ほど生徒たちが披露した「Alright、Okay、You Win」のジャム・セッション・スタイルという粋な計らい。その場で思い付いたアイデアを見事なまでに反映したプロのジャズメンによる演奏は、生徒たちに大きな刺激を与えたに違いありません。実際、この日の学びは、翌日に行なわれた『Seiko Summer Jazz Camp All Stars 2025 in Sapporo』のオープニング・アクトで存分に発揮されていました。その模様は改めてご紹介します。
フレンドリーな空気の中、『セイコーわくわく音楽教室2025 in 札幌』は大成功で幕を閉じました。

ドラムを演奏するクインシー・デイヴィスとドラムを囲む生徒たち
ピアノを演奏するダン・ニマーとピアノを囲む生徒たち

楽しむことを学んだ生徒たち

『セイコーわくわく音楽教室2025 ~Jazz編~ in 札幌』終了直後に参加メンバーおふたりから感想を伺いました。

●昨年は小学生クラスでリーダーを務めていた現在、中学1年生の加藤千結さん(Tb)

去年のレッスン同様、今年もマイケル・ディーズ先生のご指導が印象に残っています。私たちが「ハランベ」を演奏している時に自らトロンボーンを吹き、一緒に楽しんでくれていたのがとても嬉しかったです。今日の体験を活かして、今後はもっとノリのある演奏ができるようになりたいです。

●中学生クラスのリーダーを務めている中学2年生の高橋秀羽さん(P)

最初から最後まで先生方はずっと笑顔でした。その姿が目に入り、音楽を楽しむことを重視されていることが伝わってきました。僕もこれから笑顔を忘れず、楽しんで演奏したいと思います。そして、技術も磨き、ジャズの理論もコツコツと学び続けるつもりです。

(左)高橋秀羽さん(右)加藤千結さん

レクチャーを終えて

講師の方々にも感想を伺いました。

マイケル・ディーズ
彼らの生活において音楽がスペシャルだということを自ら理解しているように感じました。小中学生が芸術に対して献身的である姿は中々、目にすることができないので、とても興味深かったです。

ダン・ニマー
この年代の子供たちの多くはリズミカルに演奏するのが余り得意ではありません。けれども、今日の生徒たちはグルーブのあるプレーをしていたのでとても驚きました。

ジョセリン・グールド
音楽に多くの時間を費やしていることが感じられる“まとまりのある”演奏に感動しました。生徒からの質問内容も音楽に対する熱心さが伝わって来ましたし、何より、みなさん、とても楽しそうにプレーしていたのが良かったです。

町田類
僕は“教える”というよりも、自分がこれまでに学んできたことや大事にしていることを彼らにフィードバックしようと思って生徒さんたちの前に立ちました。それにしても、みなさん、本当に素晴らしい演奏でした。

講師全員の集合写真

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