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ジャズキャンプを支え続けるコーポレートブランディング部所属のベテランスタッフ

Interview

ジャズキャンプを支え続けるコーポレートブランディング部所属のベテランスタッフ

セイコーホールディングス(株) 湯本保憲

Profile

  • 湯本保憲 (ゆもと・やすのり)

    湯本保憲 (ゆもと・やすのり)

    湯本保憲 (ゆもと・やすのり)

    1989年 服部セイコー入社。眼鏡部に配属され、百貨店、代理店営業、宣伝販促を担当。2015年よりセイコーホールディングス(株) コーポレートブランディング部所属。企業文化チームで、主に音楽を通したブランディング業務に従事。第1回 Seiko Summer Jazz Camp 2016から制作に携わる。

セイコーホールディングスと音楽の関わり、そしてSSJCの創設

1881年(明治14年)に服部時計店が創業されて以来、音と密接な関係を持つ時計の販売、及び製造業として140年間の歴史を重ねてきたセイコーホールディングス(株)。
74年から81年まで放送された同社提供の「サウンド・イン“S”」は、大人のための音楽プログラムとしてテレビ番組史にその名を刻み、2015年からは「Seiko presents Sound Inn "S"」として新たに放送されている。
他にも震災復興応援コンサートなど、継続的に音楽と関わってきたことは、社風を形作る大きな柱の一つと言えるだろう。

「セイコーホールディングス株式会社 コーポレートブランディング部所属の湯本保憲と申します。当社と音楽の関わりは、弊社が番組提供をし、1970年代にTBS系列で放送されていた音楽番組「Sound inn S」に始まり 、代表取締役会長兼グループCEO 兼 グループCCOの服部真二が、東日本大震災被災者を元気づけることをきっかけにコンサートを開催したことが大きいと思います。2014年に『時代とハートを動かすセイコー』という企業スローガンが制定されました。この頃からブランディングはスポーツと音楽の二本柱で行くことが打ち出されて、私は2015年にコーポレートブランディング部で音楽を担当することになりました。
スポーツもそうですが、音楽は常に時や国境を越えています。そして理屈抜きに感動を与えられる点でも共通しています。エモーショナルなことや、わくわくドキドキすること、を常に意識してブランディングしています。Seiko Summer Jazz Campもその一つだと思っています。

Spice of Life(ジャズCDの制作会社)の佐々智樹社長は、当社服部CEOの大学の先輩にあたり、日頃から懇意にさせていただいていた間柄でした。その佐々さんからジャズ・キャンプのアイデアを持ち掛けられて、服部がぜひ特別協賛(スポンサー)をやらせてください、という話になってプロジェクトが始動。準備段階で佐々さんがSSJC事務局のプロデューサーを務めることが決まり、私は1回目から携わって、現在に至っています。スムーズにスタートしたのは、SSJCが音楽発展に貢献できる可能性が高いと判断されたことが決め手になったのだと思います。
私は運営の全般を担当していて、企画やテーマを決める上で毎年オリジナリティに富んだ内容にしていこう、と考えています。前年とは違うものを毎年積み上げていくことが重要なので、その部分は意識しています」。

2回のオンライン・キャンプを経て、2022年はリアルで開催

時計のメーカーとしていつの時代も音楽との関わりを持ち続けてきたSEIKOは、ジャズ以上に長い歴史を築いている。2016年に第1回のSSJCが開幕し、2019年までは直接対面式で、2020年と2021年はオンラインでWeb Jazz Campを 開催。2022年は3年ぶりとなるリアル・キャンプの開催が発表された。

「SSJCは年々応募者が増えていて、様々なレベルの受講生が集まります。最初は緊張からスタートして、最終日の4日目には仲間意識が出来上がっています。音楽を志している人どうし、誰でも仲良くなれるんですね。若い人のコミュニケーション能力は素晴らしいと、毎回感心します。
講師陣は国内外で活動している守屋純子さんと大林武司さんを除いて、全員がアメリカで活躍するトップ・ミュージシャン。英会話に堪能ではない受講生にとってのコミュニケーションは、やはり当初はぎこちないものがあります。音楽用語は難しいこともあって、最初の頃は講師が説明する微妙な部分が伝わりづらかったり、齟齬がありましたが、近年は改善されています。講師陣が伝える微妙なニュアンスを汲み取って、身体に染み込ませてもらいたい。貪欲に向かってほしいと思っています。

2020年はコロナ禍の影響で致し方なくウェブ開催になりました。受講者を集めてマンツーマンでやり取りができないので、勝手が違う部分は工夫しました。こちらから一方的に発信するものを見て聴いて、マスターしてもらうオンライン授業のやり方の難しさ。いかに多くの人に参加してもらえるか、その算段についてSNSの広告などを含めて課題を感じた年でした。
対面キャンプの良さは手取り足取りで指導を受けられることにあります。どの楽器でも指使いやリズムの使い方は、やはり対面の方がよりわかりやすいでしょう。逆に対面では聞き逃してしまう部分が、リピートで確認できるのはオンラインの良い部分です。2020年度に比べて、オンライン指導により習熟した講師が2021年度に貢献した面はあると思います。
2022年は3年ぶりにリアル開催となるので、どのような学生が全国から集まるのか、わくわくしています。私は1回目から関わっていて、年々参加者がレベルアップしていると感じています。彼らの心持ちからもそのように感じるし、講師にヒアリングしても教え甲斐があるとの言葉を頂いています。
チームワークでここまで来たと思っていますが、まだ色々と足りていない部分があるので最終的な完成形にはなっていません。内容に関しても年々レベルアップしていて、業務提携が始まったYAMAHAさんからもお褒めの言葉をいただいています。そういう意味ではやり甲斐が感じられて、担当者として嬉しく思っています」。

2022年度のテーマと、運営スタッフとして考えるキャンプへの想い

Seiko Summer Jazz Camp 2022は8月15日から18日まで、2016~2019年度と同様にリアルでの開催を発表。関係者および受講を志望する学生たちにとっての朗報となった。2022年は「“Smile When You Play Blues!”/ブルースで笑顔を咲かせよう!〜苦しみ・悲しみを乗り越えて〜」をテーマに、4日間のキャンプが行われる。

「SSJCは第4回の2019年からテーマを決めてやりましょう、となりました。2022年は3年ぶりのリアル・キャンプ。コロナ禍でマスク着用が必須になり、気持ちが塞いでしまったり、コロナの終息が見えない現在、今年の夏でもまだコロナが終わっているとは思えません。その中で楽しい場を作り、若い人たちのエネルギーと共に成功させることが求められます。
いま私の中でキーワードになっているのが「スマイル」。佐々プロデューサーからの説明ですごく腑に落ちました。いじいじしていないで笑ってジャズのルーツであるブルースを演奏しようよ、という非常にポジティブなフレーズに響いたので、直感でいいなと思ったのです。当社では別のイベントでも笑顔をテーマにしたコンサートを開催しています。
 
毎年感動的な出来事がたくさん起こります。SSJCの醍醐味は最終日のガラコンサート。そこでの盛り上がりを見ると、とても感動します。オリエンテーションでぎこちなかった参加者が、いっしょにお弁当を食べて、休憩時間に音楽談義をし、彼らがやがてプロになっていくのだなと、感慨深いものを覚えます。
講師1名に対して受講者5人。これは1回目から崩していません。もっと広く知らしめるために、受講者の数を増やせばいいという意見がありますが、学校とは違って講師1人で10人を受け持つのはなかなか目が行き届かなくて難しい。音楽と楽器を教える上で、レベルが異なる参加者のバランスを取りながら、選別された彼らを指導するのは5人が適正人数だと思います。
SSJCの卒業生に関して、プロになったとか、海外で活躍している、といった話を毎年何人か聞きます。それは誇らしいと同時に、そういう卒業生が将来、講師として戻って来てくれることに期待しています。長期的に見て、非常に良い循環になるので。それは考えるだけで感動的ですね。私はその頃、もうここにはいないと思いますが(苦笑)」。

今後の運営計画と読者へのメッセージ

ジャズとはまったく縁がなかったが、SSJCの仕事をきっかけにこのジャンルを目の当たりにし、意識しなくてもジャズが自然と耳に入ってくる感覚を身につけた。さらに音楽の興味の対象が広がっていき、色々なコンサートへ行く機会が増えている。

「様々な媒体を駆使することによって、SEIKOのブランディングの一環としてSSJCがこれまでに行ってきたことを、もっと音楽業界や、広く社会にアピールすることが最終的な目標だと思っています。ゴールを決めて動いているわけではありませんが、年々実績を積み重ねることによってそのようになればいいですね。講師による公演は東京で実績がありますが、名古屋や大阪などの地方へも拡大することも、今後の目標です。YAMAHAさんとの業務提携によってSSJCがさらに発展できれば、素晴らしいと思っています」。

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