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Seiko Summer Jazz Camp Graduates 32th Live in Tokyo スペシャルレポート

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Seiko Summer Jazz Camp Graduates 32th Live in Tokyo スペシャルレポート

アメリカ音楽大生がSeikoSJC卒業生とセッション

2016年から始まったSeiko Summer Jazz Camp。
その卒業生たちによる32回目のライブが東京・高田馬場にある「Café Cotton Club」で行われた。
2024年最初の卒業生ライブを飾ったのは真野崚磨クインテット。
人気と実力を兼ね備えた若手サックス奏者&作編曲家の彼が率いるバンド・メンバーは
池本茂貴(Tb)、眞崎康尚(P)、佐藤潤一(B)、きたいくにと(Dr)で、フレンドリーな空気の中、熱いプレイを2セット披露。
誰もが参加出来る恒例のジャム・セッション・タイムでは、来日中の若手ジャズ・ミュージシャン、コーヴァー兄妹がシット・インし、ジャズという言語が世界共通であることを伝えた。
終演後、和気藹々としたムードの出演者に直撃インタビュー!






当日のライブの感想と若手同士のつながり

真野崚磨(As):急にライブ出演が決まり、約1か月前に慌ててみんなに声を掛けたら運よく全員OKだったんです。
多忙なミュージシャンばかりなのにスケジュールが合って本当によかったです。
1年以上ご無沙汰だったり、2年振りの共演者もいましたので「Seiko Summer Jazz Camp Graduates Live in Tokyo」が再会のいいきっかけにもなりました。

池本茂貴(Tb):僕がリーダーのクインテットも今回と同じ編成ですが、トロンボーン・プレイヤーが選ぶ曲とはまた違ったセットリストなので非常に新鮮でしたね。
聴いているけれど演奏はしたことのない曲も真野くんが選んでいて演奏し甲斐がありました。

きたいくにと(Dr):真野ちゃんとは出身大学は違いますが、同級生みたいな仲なので、久しぶりに呼んでもらえて嬉しかったです。
それと、メンバーみんな、少しずつ違うフィールドで活躍しているので頻繁には会えません。今回のライブでそれぞれの“現在地確認”ができたような気がしています。

佐藤潤一(B):僕は通常の音楽活動で自分よりも年上の人とご一緒することが多いため、同年代が集まってライブをすることが案外少ないんですよ。
ですから、純粋に楽しかったですし、それぞれの演奏レベルが上がっていることを実感できたのもよかったです。

眞崎康尚(P):僕は今(2024年1月現在)、25歳でメンバーの中では1番年下になります。先輩方の演奏に触発されながらプレイできて嬉しかったですし、
“はじめまして”のきたいさんと池本さんともご一緒できて光栄でした。

※佐藤さんときたいさんはSeiko Summer Jazz Camp卒業生ではありませんが、今回のライブにご出演いただいています。

コーヴァー兄妹とのセッションについて

池本:一般的に行われているセッション・ライブは、まず、ホストが何曲か演奏し、そこから参加形式のセッション・タイムとなります。
今回はホストとなる真野崚磨(As)クインテットが2セットのライブをした後にセッションという流れだったわけで、
このようなスタイルは日本は勿論、海外でも珍しいのではないでしょうか。
要は、ホスト・バンドのライブを約2時間聴いてからステージに上がるのは結構、緊張すると思うんですよね。
僕だったら絶対に無理(笑)。
今回、ご一緒したアーロンさん(Aaron Korver・兄)とテッサさん(Tessa Korver・妹)はとてもメンタルが強いと思いました。

佐藤:ネイティブのミュージシャンと共演した時にいつも感じるのですが、演奏から聴こえる言葉が日本人ミュージシャンとはどこか違うんです。
まさに今回もそういった印象が残っています。

真野:ネイティブのヴォーカリストと共演する機会はあまりないので、今回はとても貴重な経験となりました。
楽しんでテッサさんの伴奏が出来ましたし、改めて“歌”の持つエネルギーを感じたというか……。サックス奏者からするとヴォーカリストというのは羨ましい存在です。僕は生まれ変わったらヴォーカリストになりたいですね(笑)。

きたい:テッサさんもアーロンさんも初めて会った僕のことを受け入れてくれたように思えましたし、
彼らもそんな風に感じてくれているのなら今日はとてもよいセッションだったと言えますね!



アーロンとセッション
テッサとセッション

Seiko Summer Jazz Camp卒業生とアメリカの音楽大生の邂逅

ここでアメリカから来日してセッションに参加していた
シアトル出身、バークリー音楽大学3年生のアーロン・コーヴァー(P)と
オハイオ州にあるオーバリン大学1年生のテッサ・コーヴァー(Vo)にも話を聞いた。

左:テッサ・コーヴァー(Vo.妹)、右:アーロン・コーヴァー(P.兄)

来日理由と日本におけるジャズ体験

テッサ:通っているオーバリン大学は、1月のカリキュラムが生徒それぞれの勉強したいことを独自に追求する時間となっています。
私はジャズ・ヴォーカル・パフォーマンスと日本語を学んでいますので、日本のジャズ・シーンを調査し、
それをレポートにまとめようと閃きました。
実は私、生まれた場所は日本なんですよ。
2011年からアメリカで暮らしていますが、昨年は半年間、語学勉強のために東京に滞在していました。
今回は、バークリー音楽大学に在学中の兄も同行してくれることになったので、色々な面で心強かったです。

アーロン:僕はHiromi(上原ひろみ)の大ファンということもあり、日本のジャズ・シーンに大変興味がありました。
日本に着いてすぐ、バークリー音楽大学出身の先輩日本人ミュージシャンが
どこかでジャム・セッションを主催していないか、ネットで検索してみたら見事ヒット!
東京・三鷹にあるジャズ・カフェ&バー「Sonido Ⅱ」で“みさきビート”こと中道みさき(Dr)さんによるジャズ・ライブ情報を入手することが出来たので、思い切って飛び入り参加したんです。

テッサ:ライブも色々と楽しんでいますよ。例えば、東京・御茶ノ水にある老舗ジャズ・ライブ・ハウス「NARU」では江藤良人(Dr)トリオのライヴを体感し大感激!
ピアノは片倉真由子さん、ベースは栗谷巧さん。特に片倉さんのピアノに物凄く感銘を受けました。
本当に素晴らしいライブでした。

アーロン:東京・表参道にある「ジャズ・バード」のジャム・セッションにも参加しました。
その時に共演した駿河廣(B)さんが「Café Cotton Club」で行われている毎週金曜日のジャム・セッションを紹介してくださったので足を運んでみたところ、
オーナーの茂串邦明さんが「Seiko Summer Jazz Camp Graduates 32th Live in Tokyo」の開催日を教えてくれたのです。それで僕たちはこのジャム・セッションに参加することが出来たんですよ。

テッサ:本当にラッキーでした。
ジャム・セッションというのは、ジャズ・プレイヤーに大いなる喜びを与えてくれる場だと思っています。
と言っても、私自身はこれまで学校内の仲間や知り合い、気心知れた友人とプレイすることがほとんどだったので、
楽しいのは当然ですよね。
今回は未知の場所で初対面の人たちと共演するわけですから、どうしても気おくれしてしまう部分がありました。
それでも勇気を出してステージに上がったら、皆さん、非常に温かく迎え入れてくれて凄く嬉しかったです。
その場で曲を決め、柔軟に対応してくれた彼らの演奏で歌えたことはとてもハッピーでしたし、
自分で言うのはおこがましいですけれど、カッコいいサウンドができたのではないかと思っています。
「Seiko Summer Jazz Camp Graduates 32th Live in Tokyo」及び、東京で体験したジャズに関する様々な出来事は、
文章や映像、録音物も織り交ぜたポートフォリオにして大学に提出しようと思います。

ジャズ・キャンプの魅力とは

テッサさんは流ちょうな日本語も披露

アーロン:見ず知らずの僕たちとフレンドリーに演奏してくれた皆さんにまずお礼申し上げます。
おかげで日本人若手ジャズ・ミュージシャンの高い演奏力を肌で感じることが出来ましたし、とても刺激を受けました。そういえば「Café Cotton Club」で共演したミュージシャンの多くはSeiko Summer Jazz Campの卒業生でしたよね。
僕もジャズ・キャンプの参加経験が何回かあります。難易度の高い”グラミーキャンプ”を受講するチャンスにも恵まれました。
アメリカのジャズ・キャンプというのは初心者向けから上級者向けなど様々なレベルで開催されていて、
それぞれ、参加できる条件や倍率が違うんですよ。
いずれにしても受講期間中はジャズ漬けになるので、ジャズを勉強している人間にとっては必ずや有意義な時間となりますし、
ジャズを共有できるコミュニティに自分を置くことはとても貴重だと思います。
自分と価値観が似ている人もいれば全く違うタイプの人もいる環境で切磋琢磨できますし、
少なくとも僕にとってはメリットが大きかったです。

テッサ:私もいくつかのジャズ・キャンプに参加していますが、
特に印象に残っているのは高校生アーティストの育成と支援を目的としている団体「ヤングアーツ」のサマー・キャンプです。
私はジャズのプログラムに参加し、約1週間、マイアミで対面による授業を受けました。
スクーリングはもちろん、パフォーマンスの時間もあり、とても学びの多い日々でした。
「ヤングアーツ」だけでなく参加した他のサマー・ジャズ・キャンプにおいても、そこで得た1番の財産は友情とコネクションだと思っています。
今後、私が新たな音楽プロジェクトを始めたいと思った時にジャズ・キャンプで知り合った仲間を自分のバンドに誘うこともできるでしょう? 
ミュージシャンにとって人脈というのはとても大切ですよね。
つまり、自分自身の時間を投資することで将来に繋がるということがジャズ・キャンプの最大の魅力であり、ポイントだと感じています。

卒業生から未来のSeiko Summer Jazz Camp受講生に向けて

またインタビューの最後に
バンドリーダーを務めた真野が「Seiko Summer Jazz Camp」についてひと言、コメントしてくれた。

真野:思い返せば、僕が「Seiko Summer Jazz Camp」に参加したのは7年ぐらい前になります。
今、振り返ってもあの日々はかなり濃厚でした。講師の方々から多くのことを学び、受講生からも沢山の刺激を受け、仲間が増えました。
本当に参加して良かったと思っています。
もし、応募するのを迷っているのなら僕はチャレンジすることをお勧めします!

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